クレイモデルのデジタル化

クレイモデルの3Dスキャン例

物理的なモデルをデジタル形式に変換


クレイモデルについて、粘土(クレイ)を使用して形成される立体的なモデルのことです。この手法は、自動車、産業デザイン、玩具、映画の特殊効果、アニメーション制作など、多岐にわたる分野で使用されています。特に自動車業界では、新しい車のデザイン案を検討する際に、フルスケールのクレイモデルを作成して、形状やデザインの評価、改良を行うことが一般的です。クレイモデルは、デジタルツールが主流となる前は、デザインプロセスの重要な手法でしたが、現在でもその直感的で手触りのある特性から、デザイン概念の実現や修正のために依然として使用されています。また、アニメーションでは、クレイアニメーション(クレイメーション)として知られる技法で使われ、個性的で魅力的な作品が多数生み出されています。


クレイモデルをデジタル化するプロセスは、物理的なモデルをデジタル形式に変換し、コンピュータ上で編集や分析が可能にする作業です。このプロセスは主に、以下の手順で行われます。

1,3Dスキャニング:

光学スキャン: レーザーや構造光を使用してクレイモデルの表面をスキャンし、数百万の点(ポイントクラウド)で表現される3Dデータを作成します。

触覚スキャン: 物理的なプローブを使用してモデルの表面を触り、3D形状をデジタルデータとして記録します。

2,データのクリーニングと修正:

スキャンプロセスで得られたポイントクラウドデータには、ノイズや不完全な部分が含まれていることがあります。専用のソフトウェアを使用してこれらを修正し、滑らかで正確な3Dモデルを作成します。

3,ポリゴンモデリング:

クリーニングされたデータはポリゴンメッシュに変換されます。これにより、モデルが面(ポリゴン)で構成される形状になり、3Dモデリングソフトウェアで扱いやすくなります。

4,テクスチャとディテールの追加:

必要に応じて、スキャンデータにテクスチャや細かなディテールを追加します。これにより、モデルのリアリズムや詳細度が向上します。

5,CADや3Dモデリングソフトウェアでの編集:

デジタル化されたモデルは、CAD(コンピュータ支援設計)や他の3Dモデリングソフトウェアでさらに編集や分析が可能です。ここで、デザインの変更、構造解析、シミュレーションなどが行われます。

6,プロトタイピングや生産への応用:

最終的なデジタルモデルは、追加のプロトタイピングプロセス(例えば、3DプリンティングやCNC加工)に使用されたり、実際の製品設計や生産の基礎として利用されます。


「フリーフォーム (Free-form)」は、工業設計やデジタルモデリングの分野でよく使われる用語で、従来の規則的な幾何学形状(直線、円、円柱など)ではなく、自由曲面や非対称な形状を扱うための概念・技術を指します。特に自動車・航空機・家電・アート系の工業デザインで重要です。

🔹 フリーフォームの特徴

  • 自由な曲面表現
    NURBS(Non-Uniform Rational B-Splines)やサブディビジョンサーフェスを用いて、流線型・有機的な形状を表現できる。

  • 美観と機能の両立
    デザイン性(空力特性、見た目の美しさ)と機能性(強度、流体の流れ最適化)を両立できる。

  • CAD/CAE連携
    曲面を自由に定義しながらも、後工程(CNC加工、金型設計、解析)に落とし込むことが可能。

  • リバースエンジニアリングとも親和性が高い
    スキャニングデータ(点群やメッシュ)から得られる複雑な形状をCAD化する際に、フリーフォームモデリングが活用される。


🔹 主な活用分野

  1. 自動車デザイン
    外装(ボディライン、ヘッドライト形状など)はフリーフォームの典型例。

  2. 航空機・タービンブレード
    空力性能を追求するため、曲面制御が必須。

  3. 家電・工業製品
    曲面を多用したユーザーフレンドリーなデザイン。

  4. 医療分野
    義歯、人工関節など個人差に対応するフリーフォーム形状。


🔹 フリーフォームと従来形状の違い(イメージ)

  • 従来:プリミティブ形状(立方体・円柱・球)を組み合わせる設計

  • フリーフォーム:自由曲面や複雑な有機的ラインを直接編集できる設計


🔹なぜ今でもクレイモデルが必要?

3D CAD・CGが進化しても、クレイは消えていません。理由は明確です。

①「実物サイズ」での直感的評価

  • 光の当たり方

  • ハイライトの流れ

  • 曲面の“気持ちよさ”
    画面では分からない違和感が一瞬で分かる

② デザイン修正が圧倒的に速い

  • 削る・盛る・ならす

  • その場で議論 → 即修正
    会議が止まらない

③ デザイナーの意図が伝わりやすい

  • 言葉や図面よりも「触れば一発」

  • エンジニア・営業・経営層とも共通認識が持てる


クレイモデルの種類(実務でよく使われる分類)

種類 特徴 主な用途
コンセプトモデル ラフ・短時間 方向性検討
スタディモデル 部分検証 面・R・厚み
フルスケール 実寸 最終デザイン判断
ハーフモデル 左右非対称 デザイン比較
仕上げモデル 塗装・表皮再現 展示・承認

実際の制作フロー(典型例)

デザインスケッチ

簡易3Dデータ or フレーム作成

クレイ盛り付け(ヒートガンで軟化)

削り・成形(ヘラ・スクレーパー)

面出し・左右対称調整

スキャン or 写真記録

 

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